本研究は、「言葉」、「教育」、「文化」、「地域」、「国家」というキーワードを手がかりにしながら、日本本土とは異なる歴史を歩んできた沖縄の言語教育(国語教育を含む)の歴史を示して、従来の国語政策を背景とする本土中心の国語教育史像の相対化を試みようとするものである。 報告書に収録した5本の論文は、いずれも新しい資料を発掘しながら、地域沖縄の言語文化や言語教育の実態を解明するという成果があり、従来の沖縄の言語教育史研究に新しい知見を加えたり、先行研究に訂正を求めるものでもある。5本の論文名は、次のとおり。 1.村上呂里「地域の言語文化と近代学校-八重山地域における近代学校出立の頃-」 2.梶村光郎「沖縄の標準語教育史」 3.梶村光郎「宮良當壮と『日本の言葉』」 4.梶村光郎「沖縄の作文教育運動-沖縄作文教育協議会を中心に-」 5.村上呂里「戦後沖縄『学力問題』における『言語問題』-上村(1978)を中心に-」 これらの論文によって、沖縄の言語教育史の全体像への接近が進み、従来の国語政策を背景とした本土中心の国語教育史像の相対化の試みが、今後なされていくであろう。
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