本研究は、1994年度に沖縄県内の高校に入学した若者たち約1800名(かつて私は、彼ら/彼女らが高校生だった頃、学校体験、進路意識等について質問紙調査を行っている)を対象にした調査を通じて、沖縄の若者たちの進路分化やその際の意識のあり方等を掴むことを目的としたものである。作業は、(1)統計的調査、(2)インタビュー調査、(3)理論的研究の3つの分野にわたって進められた。 (1)については、2001年度末に質問紙を配布し、2002年度前半に質問紙回収から第1次分析までの作業を行った。(2)については、(1)の回答者を学歴及び現在の職業を基準に類型化し、それを踏まえて対象者を選定し、インタビュー調査を実施した。(3)については、イギリスの社会学者A・ギデンズの著書の読解を通じて、「後期モダニティ」の時代において、今回の調査の対象者である若者たちの「自己アイデンティティ」がどのように構成されているか、この時代のグローバル化の進展という情況との関わりの中、「沖縄」というローカリティが彼ら/彼女らの自己アイデンティティの中でどのように意味づけられているのかという、私にとっては新しい分析の視点が得られた。 『研究成果報告書』では、主として(1)の結果について、上の第1次分析を発展させた形で報告した。そこでは、回答者である若者たちが、「どのような自己イメージを抱いているか」、「職業生活についてどのような考えをもっているか」、「自分の人生にとってどのようなことを重要なこととして考えているか」、「今現在自分が置かれている状況をどのように見ているか」、「『沖縄』に対してどのような思いを抱いているか」、それら全体から推測される彼ら/彼女らの「自己アイデンティティ」の有り様、性の違いによるそれらの差異、分化した進路の違いによるそれらの差異などについて、得られた知見を提示した。
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