研究概要 |
学校改革のための根本方策として学校教育の供給主体を多元化することが具体的に検討されつつある。新しい公立学校の導入の政策提言が閣議決定のレベルで行われるにいたった背景を解明することに努めた.とくに、学校改革の対抗的な原理である学校選択(市場力)と学校参加(非市場力)の理念がどのように相互に有機的な関連で把握されているのかを政策立案にあたっている関係者にインタビューを行うという形で調査した。政府機関である教育改革国民会議における提言が野党議員の議員立法の動きによって支持され,また選択と参加の理念の対比を希薄化させる形で閣議決定にいたった過程について明らかになった.また、現在進行中の教育改革が公教育に関する新しいガバナンスの形を構築することを中心的な課題としていることを究明するとともに,そうした新しいガバナンスへのアプローチが従来の教育行政理論に対してどのような意義を有するのかについて考察する端緒を開いた。とくに教育の公共性についてのこの間提起されてきた新しい観点からの議論を概観して、その多くが市場と国民国家の概念の中間に市民社会の概念を設定しようとするところに共通する特徴をもつものであるが、そうした市民社会の概念はリアルなものではありえないことを解明した.教育の公共性を論ずる主題が教育の私事性と公共性という二つの概念の理論的整合性を論ずるところにあるというよりは、国民国家という容器のなかに実在する社会の再生産における公立学校制度の活性化の方途の探求におかれるべきことを明らかにした。
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