本研究は、1920年代から1940年代初頭までの時期における綴方学習雑誌の動向について教育史的な考察を試みたものである。 わが国においては1920年代以降、各種の教師向けの綴方教育雑誌が発行されている。これは、国語科綴方に教科書がなく、教師たちが綴方教育のありようをめぐって実践的に研究を進めるためのものであった。そして、それに対応するかたちで、各種の児童向けの綴方学習雑誌も発行されていた。当時の綴方教育の動向をみるためには、児童の綴方が掲載されている綴方学習雑誌は不可欠の史料である。しかし、従来の研究においては、綴方学習雑誌はほとんど顧みられぬままであった。 本研究においては、まず綴方教育史研究において綴方学習雑誌に着目する必要があることを先行研究の検討を通して明らかにした。さらに、綴方学習雑誌の所在調査を進めて、従来の研究では顧みられることがないままのものを数種類発見した。そして、『児童綴方』『綴方○年生』『綴り方倶楽部』『鑑賞文選』についての検討をおこない、それぞれの概要を把握するとともに、それらが同時代に併存していたのではなく、相互にさまざまなかたちで関係をもっていたことを明らかにした。ただし、作文学習雑誌は、いまなお、散逸がはなはだしい。 今後の課題は、作文学習雑誌の発掘・整理と分析を続けて、具体的な作文で裏付けられた作文教育史研究へと発展させていくことにある。
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