研究概要 |
ナチズムと精神科学的教育学との関係を学会(学派)全体の関わりを調査、論究するため30年代教育学会の諸文献に当たって見たが、学会全体としての関わり、関連傾向は見られなかった。従って、従来のように精神科学的教育学派の代表的人物、つまり、シュプランガー、ノール、リット、フリットナーおよびウエニガーのナチズムに対する距離関係を当時の未刊行書翰ならびにプロトコール等の収集と解読によっておこなった,なかでも、今回の研究で注目すべきは、従来我が国では、ほとんど注目されなかったエーリヒ・ウエニガー(Erich Weniger)に関する資料がニーダーザクセン州立図書館、ゲッチンゲン大学図書館にて大量に収集することができ、ウエニガーを起点に、(1)シュプランガーとウエニガー、(2)ノールとウエニガー、(3)リットとウエニガー、(4)フリットナーとウエニガーの関係や当時の動向がかなり明確になったことである。また、同時に、ノールの未公開文献も大量に収集することができ、ノールとナチズムの関係もかなり正確に把握出来るようになった。その他、シュブランガー、ノール、フリットナーのナチズムに関する意見等が披瀝されている書翰等の収集もできた(ブラウンシュバイク大学シュプランガーアルヒーフ)。結論:代表的人物のナチズムとの距離関係を示せば以下の通りである。(1)ナチズムに対して学問的にもまた政治的にも最も強く抵抗したのがリット。(2)反対に、歴史理論的にもまた時局的状況から強くナチズムに傾斜したのがウエニガー。(3)ナチズムの初期には抵抗しながら時局の変化とともに親和性を示したのがノール。(4)影響力の強かったシュプランガーの立場は極めて微妙。心情的抵抗を図るという「内的亡命」の道を選択しながらも政治的抵抗を回避している。(5)フリットナーの立場は多くの研究者がそうであったように、抵抗を試みるのでもなく、また積極的に加担するでもなく古典研究に潜心し、結果的に、ナチズムに「同調」の立場となった。全体的な考察は『研究成果報告書』にて公表する。
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