昨年度に継続して東京帝国大学教育学科の教官の研究活動や教育について調査を進めた。本年度は、主として大正期における教育学科に関する研究を進めた。特に5講座拡張に関する研究を進め、とりわけ教育行政・制度の講座の設置に関する研究のため、海外調査などを行った。一年間の具体的な研究活動を要約すると次のようになる。 1.教育行政・制度講座のモデルについての研究 アメリカの教育科学の教育学のカリキュラム構造の調査をミシガン大学において行った。特に1920年代から30年代にかけて同大学に在籍し教育学を専攻した小泉郁子と實生すぎの例を取って当時のアメリカ教育科学の特徴と教育学科に導入された講座との比較・検証を行った。 2.主任教授吉田熊次について研究を進めた。 吉田は戦前文部省中等教員検定試験委員であったことは、よく知られている。試験委員として文検教育大意(教職教養)の試験問題の作成に関与したが、彼が中等教員の教職教養に関してどのような思想・意見を持ち、それが当時の試験にどう反映していったのか等を調査し、その結果を「『教育ノ大意』の試験問題の分析」(『「文検」試験問題の研究-戦前中等教員に期待された専門・教職教養と学習-』)に収めた。 3.5講座拡張後の研究室で行われていた外国雑誌購読会の調査研究をおこなった。 取り上げられている雑誌論文や、報告内容の分析から各教官たちがどのような学問関心を持ちつつ、研究室の共同研究を行っていったかの実態を調査した。 4.その他の研究室の共同研究 「小月小学校他三校学校調査」、「教育制度研究」などの研究室での共同研究の実態を調査研究した。
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