本研究では近代日本における教育学説史研究を大学と学問との連関に着目し、展開しようと試みた。学問は時の政策、制度、研究集団内の相互の学問的刺激、研究環境、教育体験、杜会的立場などに規定されつつ、その組織の構成メンバーそれぞれの研究動向や社会的活動に現れていく。それ故、研究者の行為としての学問研究を個人の側の生い立ちや思想の分析からのみ検討するだけでなく、その個人が所属していた組織や、研究環境からの検討は不可欠な視点である。以上の問題意識にたって、東京帝国大学教育学科を事例として、戦前の大学における教育学形成を明らかにすることを研究目標とした。 具体的には以下の計画に従い、資料収集を行った。 第一に、東京帝国大学教育学科の歴史と教育の実態に関して、『東京帝国大学一覧』、『東京帝国大学文学部学生便覧』、『教育学部史』などの資料を東京大学内、筑波大学等の諸大学図書館及び国会図書館などの諸機関により収集した。 第二に、教育学科の制度に関する資料を主として東京大学文学部事務室、国立公文書館などでの文書類の探索、加えて当時の雑誌記事などから収集した。また、五講座構成のモデルとなったと推測される当時のアメリカの教育学部の学科構成を調査するため、ミシガン大学にて調査を行った。 第三に、教育学科の共同研究の実態やその研究成果に関する文献収集を行った。また、教育談話会に関する調査を行い、『教育思潮研究』などから関連記事を収集した。 第四に、教官の経歴や研究に関する調査を文献資料により行い、収集した。 以上の調査活動を通じて得られた資料の一部を、歴史、制度、人的構成、研究、教育、教官の研究動向に構成し、資料集を作成した。
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