健常な人が人やものに興味を示し、行動をする際には、視覚からの情報が重要な働きをしている。これは、知的障害、情緒障害、運動機能障害等、他の障害を併せもつ視覚障害児・者にとっても同じである。視力や視野等の視機能評価が困難であるため、視覚を活用した取り組みが軽視される傾向があるが、自分自身で見え方や見えにくさを主張できない彼らにこそ、視機能評価やそれに基づく視覚的な配慮が必要なのである。そこで、本研究では、見え方や必要性に合った視環境を整備したり、視覚活用を促進する道具を選んだり、教材を作成するための根拠となる視機能評価方法について検討した。以下、本年度の主な成果を示す。 (1)フィールド調査:重複障害児・者の視環境整備の必要性に関するフィールド調査を実施した。その結果、医療的な視機能検査が不可能とされている重度重複障害児の教育的な関わりにおいて、視機能評価の希望が多いことがわかった。また、重複障害児に有効だとされているTeller Acuity Cards等の視機能検査も標準的な検査手法では適用できないケースがあることがわかった。 (2)視機能評価システムの第1次試作:重複障害児・者の視機能評価を行うためのパソコンベースのシステムの第1次試作を行い、主として、肢体不自由養護学校でフィールド実験を実施した。その結果、何らかのシンボルを獲得しているケースでは、本試作システムが適応可能であることがわかった。しかし、シンボルの理解が困難なケースについては、本試作システムでは評価が出来ず、別の手法を検討する必要性のあることがわかった。
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