本年度は、カトリシズムにおける宗教教育の理論的・歴史的な基礎データの収集を行った。当初は、秋にアメリカやカナダにおけるBernard Lonerganの理論に基づくカトリシズムの宗教教育の実践カリキュラムや資料などの収集を兼ねた北米調査を行う予定であったが、9月の同時多発テロの発生によってそれが不可能になったため、日本国内におけるカトリシズムの宗教教育及び他宗教・宗派におけるの歴史および実践に関する資料を収集・整理し、基礎データを入力する作業を主に行うこととなった。また、それとともに、1965年の第二バチカン公会議において、他宗教理解を大きく変えることになったカトリシズムの思想的・歴史的背景に関する資料収集を行った。 我が国のカトリシズムにおける教育の現場で諸宗教に関する理解とその教育の必要性が指摘されるようになったのは、公式的にはこの第二バチカン公会議以降である。第二バチカン公会議以前から、カトリシズムが宗教的マイノリティである日本においては、諸宗教に関する対話と理解の必要性が指摘されていたようであるが、この公会議の内容が我が国のカトリック界において理解されるようになるには、さらなる時間が必要となったようである。とりわけカトリックの教育界においてそれが認識され、実現されていくには他の国のカトリシズムにおける教育よりもかなりの時間がかかっているように思われる。細かい分析は次年度および次々年度にゆずることとなるが、我が国におけるカトリシズムの教育の中でも、その教育母体となっている修道会や宣教会によって、この点においての差が生じるものと思われる。
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