本年度は、昨年度収集したカトリシズムの宗教教育および他宗教・宗派における歴史および実践に関する理論的・歴史的な基礎データをもとに、国内の主要な教育系修道会における歴史的経緯とその背景の考察、および、第2バチカン公会議後のいわゆる「諸宗教の神学」の発展に伴うカトリシズムにおける諸宗教理解の変遷を考察した。 第2バチカン公会議、およびその後の諸会議を転機としたカトリシズムの宗教教育における教育内容の変化は昨年指摘したとおりであるが、その変化が実際の日本の教育現場においてどのように受容され、応用されているかに関しては追調査が必要となることが明らかになった。第2バチカン公会議の出した諸宗教理解の受容は、言語的・文化的な問題もあって、邦人系の教育修道会よりも外国系(西欧系)の教育修道会によって、より早くより深くなされたように思われているが、実際のところは必ずしもそうとは言えないようである。おそらくそれは、それぞれの修道会の教育理念や内容の見直しのシステムに起因するところが大であると思われるが、同じ西欧系の教育修道会であっても修道会本部と他地域の修道院・およびその学校との相互協力関係のあり方の差、および創立者の出身国・地域などの違いによって生じる教育プログラムの違いによるものも大であると思われる。 この点を明確にするために、近隣諸国におけるカトリシズムの教育理念との比較も視野に入れつつ次年度の研究を行う予定である。また、とりわけ、この点におけるカトリシズムの理解の変化は、バチカンが近年新たに出したいわゆる『新カテケージス(公共要理)』の中においても顕著に見られることから、それを念頭に置いて分析を進めたい。
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