本研究では従来ほとんど研究がなされてこなかったカトリシズムにおける宗教教育に注目し、その理念の変化の過程を歴史的・思想的に検討した。 カトリシズムにおいては1965年に終了した第2バチカン公会議において、他宗教に対する理解をそれまでの姿勢とは全く異なり、大きく変えることとなった。カトリシズムにおける教育の現場で諸宗教に関する理解とその対話教育の必要性が指摘されるようになったのは、公式的にはこの第2バチカン公会議以降である。しかしながら、実際にそれらがカトリシズムに基づく教育の現場に現れるまでにはかなりの時間を要することとなっており、現在もまだ大きな課題となっている。この点においては、カトリシズムがマジョリティの国々よりも、マイノリティである国々の方が進んでいることが明らかとなった。また、一枚岩と考えられがちなカトリシズムの宗教教育において、実際にはそれに具体的に関わる教育修道会の霊性・理念などによって、多様性が見られることも明らかとなった。 さらに、近年バチカンが出した『新カテケージス(公教要理)』、及び、各国の司教協議会によって編集された『新カテケージス』においては、いわゆる「諸宗教の神学」の発展も反映して、第2バチカン公会議の路線から一歩進んだ形での他宗教理解・宗教教育理解が出てきている。 我が国のカトリシズムの宗教教育実践においては、前述の通り、各教育機関の背景にある修道会、とりわけ邦人修道会における宗教教育理解・第2バチカン公会議理解が大きな影響を与えたことが指摘される。また、実際のカトリシズムにおける宗教教育の直接のインターフェースとなる現場の教員たちによって、上述の『新カテケージス』及び司教団文書・教皇文書などにおいて提出された内容が理解され、実際の教育内容としてまとめ上げられていく組織に関しても、検討を行った。
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