学校による地域資源活用の実態と意識を探るために、事務職員に対するアンケート調査を実施するとともに、その取り組みに関する先進校の事例を考察していった。これらの調査研究の結果から、おおよそ以下の諸点が明らかになった。 (1)地域との連携による地域資源の活用校においては、ある程度の実績を重ねていくと、学校のスリム化効果が現れてきている。連携当初には教職員の不安が少なくなく、またその仕事も増える傾向はあるが、連携業務が軌道に乗るようになれば、教職員と地域住民の双方がその手順を身につけるようになり、学校業務の肥大化が改善されている。その例として、三鷹市立第四小学校や鹿沼市立石川小学校、福岡市立原小学校などを指摘することができる。そして、事務職員アンケート調査において、経験年数の長い職員ほど連携業務を負担に感じていない実態が明らかになった。 (2)事務職員には現段階では連携業務に関わっているものは多くないが、今後、その業務にも関わるべきだと考えるものは、おおよそ80%以上も見られたところである。今後は、事務職員を含めた教職員の組織的な取り組みが大切になると考えられる。 (3)地域との連携については、学校を支援する地域組織の役割が大きい。時に、学校教職員の異動や地域住民の転出等があっても、その連携が安定して維持できるという利点が指摘できる。たとえば、三鷹市立第四小学校の「夢育支援ネットワーク」や柏市立逆井中学校の「十色、咲かそう会」など特定の学校支援を当初目的にした組織のほか、横浜市神奈川区の「神奈川、あなたの持ち味応援団」、相模原市の「さがみはら教育応援団」などのように、学校を特定せずに自発的に学校を支援していこうとする組織も現れている。これら地域組織は学校のスリム化を図る上でも、今後の活動が期待されるものと考えられる。 (4)学校と地域の連携によるスリム化を図るためには、学校支援ボランティア・コーディネーターの役割が重要な役割を果たしている。コーディネーターには教職員が担当する場合と地域住民が担当する場合とがある。今後は学校では連携担当教員を校務分掌に位置づけ、また地域については栃木県や神奈川県綾瀬市の例のようにコーディネーター養成講座等を実施するなどして、学校支援コーディネーターの配置を促すことが課題になる。 以上の調査研究を進める過程で、新たに学校支援ボランティア等の地域資源を活用する学校は急速に増加してきている。そこで、今後、実践校等に対する調査研究の必要性を感じている。
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