前年度に実施した調査結果を受けて、主として平成14年度は、大きく次の2点からの調査研究をおこなった。 まず、1点目は、専門学校の現状分析に関する調査研究である。これは、アンケートによる在学生の意識調査を行い、その結果から得られた知見をもとに、面接調査をおこなうという2段階の方法を用いた。アンケートには、とくに大学や短大との競合関係の厳しい分野(教育・福祉関係分野)と、専門学校にのみ大きく依存している分野(衛生関係分野)を比較するという視点をとった。そののち、それぞれの分野に在籍する学生の意識と実態の真相に迫るべきインタビュー調査をし、データのさらなる検証を深めた。 また、2点目は、専門学校の将来展望に関する関するシミュレーションである。前年度の経営者側の意向とは別の次元で、在学生を中心にした面接による聞き取りから、専門学校の社会的役割が確実に変化していることを分析するものである。それは、学生が資格を志向するのか学歴社会を所与のものとしているのか、といった先行研究の分析とどのように今日的現実が乖離してきたのかを示すことを目的とした。 いずれの場合も、高校卒業後すぐに専門学校に進学する学生群(ダイレクト・エントリーと定義)と、大学や社会経験などを経た後に専門学校へ進学する学生群(ディレイド・エントリーと定義)では、かなり在学生に学習意識や将来展望に差がみられることが明らかとなった。 調査研究の結果は、以下のような観点から分析した。(1)専門学校の社会的役割の変化(2)ダイレクト・エントリーとディレイド・エントリー群のコーホート分析(3)在学生の「学歴社会」vs「資格社会」の実態認識とその変化(4)ディレイド・エントリー学生の入学経路分析(5)生涯学習社会への対応、などである。 なお、研究成果は、日本教育社会学会第54回大会「高等教育部会」での意見交換、『比較教育社会学入門』の刊行などによっても行ってきており、それらをすべてまとめたものを、研究成果報告書として刊行する予定である。
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