本研究は、1970年代以降の在日韓国・朝鮮人教育の研究と実践を3年計画で体系的に跡づけようとするもので、本年度は2年目に当たる。 本年度の研究目的は、1.約20年分の実践記録の分析、2.先行研究の読み直し、3.関係者への聞き取り、であった。まず1.については、696本の実践記録についての量的分析と分科会毎の質的分析をおこない、その成果を2002年9月21日の日本教育社会学会で発表した。その結果、都道府県別の報告数の推移から実践の拡がりが確認され、学校種による取り組みの格差や学校関係者以外の担い手の存在が浮かび上がった。また、各分科会毎の報告の性格をある程度析出することができた。しかし、分科会単位の分析はレポート数の規模が大きすぎて質的分析を深めるには限界があるため、実践記録のテーマや対象、方法等によって特徴ある小グループに分け、より詳細な分析をおこなっているところである。 2.については、戦後の教育権についての研究の蓄積と小沢有作による先行研究の再検討をしたが、在日韓国・朝鮮人教育の依って立つ根拠が「民族」教育権であることの意味と限界についてさらに分析を続けることが課題となっている。 3.については、かつて「解放教育」を受けてその後教員となった在日朝鮮人と、上記の実践発表の場である全国大会を運営してきた日本人関係者の聞き取りをおこなった。その結果、在日韓国・朝鮮人教育実践に「解放教育」が与えた影響と独自性について確認することができた。今後も実践記録の語りを分析していく上で、この共通性と独自性という視点は継続して追求されなければならない課題であることが確認された。 以上のように、本年度の研究によっておおよその枠が設定されたので、次年度はいよいよまとめに入る予定である。
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