研究概要 |
本研究は、1)日本語を母国語としない保護者やその子どもに対する保育者の対応の実情を把握、検討し、就学前教育・保育施設の課題を明確にすること、2)1)の結果を踏まえて日本語を母国語としない親子に対する対応の指標を見出すことを目的とした。 1)の目的に関しては、13年度に大阪府と兵庫県の幼稚園および保育所の保育者の自由記述式回答894の分析を行い、その特徴や傾向をまとめ、14年度に、その結果に基づいて、保育者が対応上「困ったこと」として挙げている言語と異文化理解に関してそれぞれ詳細な考察を加え、保育者の対応上の留意点を整理した。言語に関しては、子ども、保育者、保護者の3側面から分析した結果、言語とアイデンテイテイ形成との関係を考えて、子どもの生涯を見据えた母語の維持、保障が肝要であると言える。異文化理解に関しては、保育者が子育て文化の違いを感じている要因、すなわち食事、しつけ、衣服、健康、その他の生活習慣、宗教について、子育ての方法や価値観の違いをどのように受け止め、対応したらよいかということを考察した。保育者には、子どもの発達に関する基本的理解、異文化の子育てや習慣に関する知識、自文化中心主義からの脱却の難しさについての認識が求められる。 2)の目的に関しては、多文化社会の先進国であるスウェーデンとイギリスの教育・保育に関して文献研究を行い、わが国の課題に対する指標を整理した。 (後55字)さらに、保育者に要求される知識・態度・技能についてより明確にするため、就学前教育・保育関係者のためのガイドブック(Gonsales-Mena, J. Multicultural Issues in Child Care, Mayfield Publishing, 2001)の翻訳を行った。(平成16年春出版予定)。
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