本研究は、フランスにおける就学前教育と小学校教育を一体的に組織する教育改革(学習期システム)についての制度的・内容的な検討を行うことを企図したものである。本研究を通して以下のような結果を得ることができた。 1.(歴史的検討)学習期制の導入は、60年代からの実験や提案に起源を持つ。その先導的試行から学習期制による一貫した教育システムの成立に至るまでの経緯と背景、改革動向について整理した。 2.(制度的検討)90年代に導入された学習期制の実施の過程、及び課題について検討した。 3.(内容的検討)学習期システムの成立の経緯に対応した初等教育の教育内容の変化を明らかにするため、戦後のフランスの初等教育の学習指導要領の変遷を検討した。教科と教科群や領域の捉え方の変化とその背景、1990年代以降の学習指導要領に見られる学習観や能力観から教育内容の連続性・一貫性について考察した。とくに2002年2月の新しい初等教育学習指導要領を検討した。 4.(教育方法の革新の視点)小学校、保育学校等を訪問し、その学習期制への取り組みを実際に見聞し、資料を収集した。また、国立教育研究所(INRP-CRESAS)等の関係機関に於いて研究レビューを受け、教育内容から教育方法への研究視点の発展(個別化教育、インクルージョン)についての教示を受けた。パリ市郊外の「ブルソー・オープン・スクール」など学習期制による教育方式を先導的に研究開発し、実践してきた学校について調査し、学習期制の教育内容や個別化教育のあり方についての具体的検討を行った。 本研究を通して、学習期制が教育内容とともに教育方法の革新を指向するものであることが明らかになり、とくに民間の教育革新運動の影響が大きいことが判明した。今後、この研究を方法的側面からさらに発展させる予定である。
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