本年の研究の重点は、もともと民衆教育アソシアシオンにおいて職業化が推進されたアニマトゥールが、近年急速に地方自治体(特に市町村)において公務員として雇用されるようになった実態・動向とその意味を明らかそこすることにあった。その結論は以下の通りである。 アニマトゥールの職業化が推進され始めた1960年代には、公務員としてのアニマトゥールは皆無に等しかったが、今目では12万人いるといわれるアニマトゥール職員の4人に一人が公務員である。このように急速に公務員化が進んだのは、(1)地方分権改革の推進によって求められた市町村の自立のために、一定の経験を積んだアニマトゥールの雇用が必要であったこと、(2)アソシアシオンにおける全国労働協定の成立によってアニマトゥールの身分保障の追求が現実のものとなったこと、(3)社会的に高度なニーズの高まりにより高度な専門職性が求められるようになったためである。 そうして今日では、地方公務員の職群としてアニマシオン部門が設置され、そこでの独自の採用・固有の身分が法的に確立されるようになった。ただし、その身分は依然必ずしも専門職にふさわしい位置づけを持ちえていない(日本での中級職止まりで上級職はない、非常勤職員の割合が依然高いなど)という課題も大きく残されたままである。 こうしたアニマトゥールの公務員化の推進は、労働協定の制定などアシシアシオンの影響が少なからずあり、公務員化が進んだアニマトゥールであっても、その活動の自律性・専門性は、アソシアシオンおよびそこに働くアニマトゥールが自律性・専門性を担っていかに役割を果たしているかに大きく左右される。つまり、アソシアシオンは、アニマトゥールの公務員化によって決してその役割が低くなったのではなく、専門職性の実質的内実の確保、市民社会の強化という課題を背負って、ますますその存在意義が問われているのである。一見逆説的ではあるが、市民社会におけるアニマトゥールの活動が活性化することで、公務労働もまたより充実したものに発展していくという、アソシアシオン・アニマトゥールと公務員アニマトゥールの関係性が明らかになったと考える。
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