研究課題
基盤研究(C)
奥会津と播州という対照的な地域の在郷商人の日記分析を中心に、地方文書をも比較する方法で、近世農村の家族生活と子育て意識の究明を試みた。近世農村の日記を対象として子育ての習俗や意識を探ると、以下の様な特徴的な問題が登場する。1、家内部の人間関係と子どもの立場に影響を与える要素として・家族形態や世代交替の様相および、・嫡男と次三男、女子のライフコースの様相がある。傍系親族の分家可能性、隠居慣行、結婚や離家年齢など家族の構造を規定する諸条件は、直接間接に子育ての性格に影響を与えている。2、子どもに関する記録として日記に多出するのは、・生育儀礼の習俗、・子どもの病と死、幼児喪法の記録、・手習いなど子どもの修行の記録である。生育儀礼は子ども期の観念や、人々が重視する年齢段階を表す。病と死、幼児葬法の記録は生命観や子どもへの愛着が表現されている。また、これらの記述の中に、当時の人々が子どもの資質や人間形成に何を期待したかが表現されている。3、子ども数や出産間隔、子どもの出生に対する感想などの中に、家族戦略として子ども数やその性別へのコントロールの意識の「芽生え」を見いだした。出生制限と子育ての意図的傾向性の相関が興味深い。4に、日記の中に登場する下人や近隣の記録は、家族と子どものありようの階層性を示唆する。これらの総合によって、この時代の子育てのゆるやかな地域性を検討する事が可能ではないかと考えるようになった。今後は、日記の事例を増やす事で、地域性を通じて近世の子育ての理解を深めたい。また宗門人別改帳との比較によって、別家し分けや多産傾向、高い乳幼児死亡率の意味の解釈が可能になった。嬰児殺しの防止をめざす赤子養育や、捨子の養育に関わる地方文書は、遺されかたにその施策の焦点がみいだせる。奥会津農村では嬰児殺しと堕胎が、また天保年間の播州農村では捨子が、子育て問題の焦点であった。
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