研究課題
地理的条件の異なった3つの短期大学が共同して、それぞれの短期大学の卒業生、およびその就職先等の企業に対してアンケート調査を実施した。それらの結果を「人文・社会系教育」「自然・環境系教育」「言語コミュニケーション」「英語教育」「実務教育」の立場から分析し、考察を行った。企業が短期大学教育に期待するもののうち「一般教育や社会的常識を身につける教育」が圧倒的に多かったことから、短期大学が専門学校との差を明確に打ち出せるような真の教養教育を追求していかなければならないことが確認できた。第2に期待度が高いのが「企業で役立つ実務教育」であった。企業が進めている国際化や情報化に対応する任務を分担するために、ビジネスマナーやコンピュータ操作技術等の習得が期待されている。本調査から、日本の多数の短期大学がカリキュラムに組み入れている全国大学・短期大学実務教育協会の各種称号は企業にあまり認知されていないことがわかった。したがって、これら協会のガイドラインによって、本来の教養科目の幅を狭めることがないように、精選した資格設定をする必要があることが再認識できた。卒業生の回答のうち、短期大学を卒業してよかったことの理由として「幅広い教養」「企業で働くための実践力」「資格取得」が上位にあげられた。また自由記述の中に、短期大学教育に生かすべき事柄がたくさん含まれていた。上記を総合して、我々、教養系短期大学は、まず第一に広い視野と判断力の養成を念頭におき、生涯にわたる自己教育力をつけさせることを目指すべきである。その上で、実務教育をカリキュラムに取り込むことによって、短期大学の学修にめりはりをつけ、企業に定着していくための実務を習得させる必要がある。本研究は、このような観点に立ってカリキュラムモデルを策定しながら、教養教育と実務系資格設定の整合性を見出すことができた。