ADHD児に対する『環境対話教育(通称環境対話法)』は、脳科学の、特に神経伝達物質の心理的特性を活用する立場から、「コントロールされた環境と意識的にかかわらせること、すなわち対話をさせることにより、前頭葉や扁桃体のシナプスに特定の神経伝達物質を流し、行動の改善を目指す教育臨床的手法」と定義される。シナプス内でドーパミンやノルアドレナリンの濃度を高めると考えられているメチルフェニデート(商品名リタリン)の特性にヒントを得て、同様な効果を教育環境で実現するために、サイコモーター、子ども会議、認知・言語プログラムなどで構成されたプログラムをキャンプ形式で実施した。連続遂行課題、GO/NOGO電位課題、図地知覚検査、DSM-IV評価などで、効果測定した結果、ADHD児に対する環境対話キャンプの効果が明らかになった。そこで、プログラムの構成因子を検討した所、21のスキルが発見された。それらは、リズム(強弱のある話し方)、テンポ(速さを変化させる話し方)、快感(たのしい雰囲気)、変化(表現のトーンを変化させる集中のさせ方)、緊張(注意ではなく課題を出して追い込む集中のさせ方)、希望(否定ではなく、希望をもてるような話し方)、見通し(具体的な数字をあげて説明する話し方)、刺激(黒板や話し方から余計な刺激を取る説明の仕方)、作業(動きを取り入れる集中のさせ方)、工夫(アイデアをひねり出す活動の重視)、抑制(待たせてほめる対応)、イメージ化(ワーキングメモリが向上するような話し方)、視覚化(情報を映像に置き換える説明の仕方)、評価(子どもの反応の即時的に価値を与える手法)、確認(説明についてきているかをチェックする手法)、机間指導(子どもの席へ近づく手法)の16と、不安傾向がある場合に用いる、見つめる、ほほ笑む、話し掛ける、ほめる、触る(触れる子には)の5つの、合計21である。授業で活用できるスキルと考えられる。
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