本研究は、教育環境の議論が最も先鋭化する学校統合と学校選択制を取り上げ、その実施と検討過程の分析を通じて、学校教育環境の充実方策と課題を検討し、今後の学校教育環境整備の方向に関する政策的知見を得ることにある。主たる研究作業は次の通りである。 1)公立小中学校数の推移に関する分析 過去20年間5時点の市町村別公立小中学校数のデータに基づき、学校数の増減傾向を明らかにした。小規模町村では、小学校や中学校が各1校のみとなる状況も増えている。 2)学校統合に関する資料収集及び分析 全国の10市町村教育委員会への訪問調査を行い、少子化の動向、統合をめぐる関係者の意見、統合の要因ないし契機、統合の条件などについて整理検討するとともに、新たに整備された学校施設の見学を行った。小中学校の統合基準となる適正規模については、地域条件を反映し市町村によって幅があること、また統合は、学校改築が大きな契機となることが明らかとなった。 3)通学区域の弾力化に関する資料収集および分析 弾力化の進む東京都の区部では、品川、荒川、豊島の3区ならびに日野市を対象に、また、地方圏の事例として穂積町(岐阜)と紀宝町(三重)を取り上げ、訪問聞き取り調査を実施し、通学区域の弾力化の経緯・効果・課題等を整理検討した。 4)高校の再編整備計画に関する分析 各都道府県の審議会答申や計画書の資料収集を行い、最近の再編整備の動向を整理した。
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