本年度は、前年度に実施した学校予算に関するアンケート調査やこれまで収集した文献資料等を用い、校長の専決で執行できる学校予算額の上限はおおむね20万円未満とされていることが多いことなどを明らかにした。さらには、ロジスティック回帰分析を行い、校長の専決で執行できる予算額の大きさは、学校数の多さや、特色ある学校づくりなど学校の自律的な執行を委ねるような施策の有無などに関連性があることなどの知見を得たので、日本教育行政学会年報に投稿し同誌上に掲載された。 また、各学校においては財務事務を主として取り扱うのが学校事務職員であることから、学校事務職員が財務運営の効率化に寄与できるような施策としての学校事務の共同実施の事例に注目し、宮崎県教育委員会及び佐土原町教育委員会等における実践事例を訪問調査し、学校間での財務事務処理能力の格差是正という重要課題において、学校事務の共同実施が一定程度有効に機能しているとの結論を得た。最後に、各都市教育委員会から学校配当予算資料等を収集したがいずれの教育委員会も地方自治法施行規則の節区分を参考にしている点で節そのものを分析指標として活用できる可能性はあるものの、活動別・事業別の分析に資するような共通する枠組みの構築には、自治体財務会計制度そのものの抜本的見直しが不可欠であり、まだまだ実現可能性が乏しいことから、本研究では米国の地方学校区で用いられる公立学校財務指標等を連邦教育省教育統計ナショナルセンター作成の資料の翻訳を通して比較検討を行った。
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