経済のグローバル化が教育にどのようなインパクトをおよぼすかをさぐる事例として、メキシコを取り上げ、この国の1990年代の教育改革に焦点をあて、分析する作業をおこなった。メキシコ国は、1993年に米国、カナダとの間で「北米自由貿易協定」を締結し、新自由主義を掲げて経済のグローバル化への対応を国策として推進してきた。教育改革は、政府の優先的政策課題の一つとされた。なぜなら、国際競争力の育成という緊急の課題に直面した時、労働力人口層の平均的学歴水準の低さ、社会階層や地域間における教育の格差、提供される教育の質の問題、科学技術の開発を担う人材の不足など、積年の教育問題が一層明瞭に認識されるようになったからである。グローバリゼーションは、教育への関心を高め、教育改革を推進させる力となった。 1.経済のグローバル化の進展と教育改革との関連について、理論的、包括的に考察した諸論文を収集し、訳出、分析する作業を行った。 2.ユネスコのラテンアメリカ・カリブ海地域教育事務所、世界銀行、米州開発銀行、米州サミットなどの刊行したドキュメント、研究情報資料等に基づいて、グローバリゼーションがラテンアメリカ地域全体の教育にどのような影響を与えているかについて、包括的に分析した。 3.メキシコに焦点をあて、1990年代に行われた教育改革のさまざまな側面、すなわち(1)憲法教育条項の改正、総合教育法の制定、(2)基礎教育制度の改革、(3)成人教育制度の改革、(4)遠隔教育を利用した中学校教育の普及、(5)へき地への教育普及の事業、(6)親や地域社会の学校参加の推進、(7)高等教育における評価と認定の導入、(8)科学技術研究の人材育成の機構、について分析し各テーマで論文を執筆した。
|