本年度の研究実施の概要 以下の2つの観点から研究を実施した。 (1)弱視児用教育漢字筆順学習ソフトの開発に関する研究 弱視児童のための教育漢字筆順学習支援ソフト(Windows対応)の開発を行った。弱視児童は一人ひとり見え方が違うため、それぞれの視覚特性に応じた教材提示が必要である。そのため、文字サイズや配色を自由に設定できるHTML(Hyper Text Markup Language)とCSS(Cascading Style Sheets)による漢字筆順学習ソフトウェアの開発を行った。本ソフトウェアの試用の結果、以下のことが示された。個々の児童は、1)それぞれの見え方に応じてコンピュータ画面の文字サイズや配色を自由に設定できた、2)漢字の選択を学年別および画数別の索引から漢字を自由に選択することができた、3)漢字の筆順を正確に記憶できるまで、キー操作により何度も繰り返し筆順を確認する様子がみられた、そして、4)漢字学習に本ソフトウェアを積極的に利用する様子が見られた。これらのことから、本ソフトウェアがロービジョンの児童の漢字筆順学習に活用できることが示唆された。 (2)視覚障害幼児の視覚活用の評価とその指導プログラム(VAP-CAP(J))の作成に関する研究 視覚障害幼児の日常生活場面における見え方と機能的な視覚認知を評価するための道具としてのVAP-CAP(J)検査の有効性について検討した。今回、オリジナルのVAP-CAP検査を日本の視覚障害幼児に適用できるように改訂版のVAP-CAP(J)検査を作成し、2名の視覚障害幼児に実施した。その結果、この検査が日本の視覚障害児幼児にも十分に適用できることが示唆された。この検査の有効な点として次のことが示された。すなわち、1)検査が子どもの慣れ親しんだ日常の場面でできること、2)検査の方法が容易であること、3)検査のために特別な道具を必要とすることなく日常の玩具や用具を活用できること、4)検査対象として重複障害児にも適用できること、5)各検査項目が指導領域との関連で示されていること、6)検査の結果が個別の発達プロフィールとして示されること、7)検査結果に応じて具体的な指導課題や活動例が示されること、等である。これらのことは教育実践の観点からきわめて大切であり、今後、このVAP-CAP(J)検査を日本の教育現場において活用できるようにすることは大いに価値あることが示唆された。
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