本研究は、視覚聴覚二重障害をはじめとする重複障害を有する児童・生徒を教育している学校や施設等に対して、専門職として介入し、現場での課題解決に参画することを目指した「学校コンサルテーション」に関する研究である。養護学校のセンター化やサービス提供機関としての役割の再認識がいわれている今日、特殊教育なかでも重複障害教育を担当する教員の専門性について研修の必要性が一層高まってきているが、外部機関や専門職を活用しての研修体制はまだ十分に整っていない現状がある。そこで、研修を通じた専門的力量形成の方途を探るとともに、コンサルタントとしての専門職の在り方について検討するための実践的資料を得ることを目的とした。 3年計画の1年目にあたる本年は、これまでに研究会や教育相談を通じてつながりのある機関の中から、この研究プロジェクトに共同してもらえる特殊教育学校や特殊学級等を選定し、そこで重複障害(視覚聴覚二重障害を含む)を有する幼児・児童・生徒の担当者との協議をすすめた。それとともに、実際に重複障害を有する幼児・児童・生徒をめぐる教育実践検討をそれぞれの機関の事情に応じて、1)授業研究2)事例研究3)部内実践検討会4)事例を中心とした学習会あるいは講演会5)個別相談、といった形式で積み重ねた。方法としては、実際の参与観察、授業参加、協議(研修会・研究会)、電子メールによる情報交換、テレビ電話による情報交換および検討会・実践場面のビデオ収録とその検討によった。これによって、教育実践そのものに関する資料とともに、事例を中心とした研修会に関する資料が収集された。また、研修の際に利用した資料のうち3点が発表資料として公刊された。特に、その発生率の低さから情報の普及がまだ未整備な状態にある視覚聴覚二重障害については、今後研修の際に利用できる簡便な研修テキストの必要性が示唆された。
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