本研究は、視覚聴覚二重障害をはじめとする重複障害を有する児童・生徒を教育している学校や施設等に対して、専門職として介入し、現場での課題解決に参画することを目指した「学校コンサルテーション」に関する研究である。養護学校のセンター化やサービス提供機関としての役割の再認識がいわれている今日、特殊教育なかでも重複障害教育を担当する教員の専門性について研修の必要性が一層高まってきている。そこで、研修を通じた専門的力量形成の方途を探るとともに、コンサルタントとしての専門職の在り方について検討するための実践的資料を得ることを目的とした。 3年計画の2年目にあたる本年は、昨年度同様、この研究プロジェクトに共同して取り組んでいる特殊教育学校や特殊学級等について、そこで重複障害(視覚聴覚二重障害を含む)を有する幼児・児童・生徒の担当者との協議をすすめた。それとともに、実際に重複障害を有する幼児・児童・生徒をめぐる教育実践検討をそれぞれの機関の事情に応じて、1)授業研究2)事例研究3)部内実践検討会4)事例を中心とした学習会あるいは講演会5)個別相談、といった形式でコンサルテーションを積み重ねた。方法としては、実際の参与観察、授業参加、協議(研修会・研究会)、電子メールによる情報交換、テレビ電話による情報交換および検討会、実践場面のビデオ収録とその検討によった。回数的には、継続的なコンサルテーションとしては福島県立郡山養護学校4回、宮城県立盲学校9回、栃木県立盲学校6回、東京都立葛飾盲学校8回、静岡県立静岡盲学校8回、川崎市たんぽぽ学級8回、短期介入(1〜3回程度)としては11校へのコンサルテーション活動を実施した。これによって、教育実践そのものに関する資料とともに、事例を中心とした研修会に関する資料が収集された。また、日本特殊教育学会において、自主シンポジウムを開催し、本研究の取り組みを紹介するとともに、同様の取り組みを行っている研究者等から意見を得た。さらに、成果の一端を、本研究所主催特殊教育セミナーIにおいて、研究協力機関の代表者から発表してもらいセミナー参加者から意見を得た。
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