タイ北部におけるユーミエン(ヤオ)族の核家族化と祭祀・儀礼知識の変化に関する研究

2004 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 13610355
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 一般
• 研究分野: 文化人類学(含民族学・民俗学)
• 研究機関: 東京学芸大学
• 研究代表者: 吉野 晃 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (60230786)
• 研究分担者: CHANTRABUMROUNG Mongkyhol Ministry of Social Development and Human Security, Dept.of Social Development, Social Work and Research Officer ; CHAMLONG Somukiat Ministry of Social Development and Human Security, Office of General Secretary, Social Work and Research Officer ; LEGSOMBOON Wisoot Chiang Mai University, The Uplands Program, Faculty of Agriculture, Research Assistant
• 研究期間 (年度): 2001 – 2004
• キーワード: 核家族化 / 焼畑耕作 / 父系合同家族 / 職業多様化 / 出稼ぎ / 祖先祭祀 / 祭司・儀礼知識 / 文化復興運動

研究概要

本研究では、タイの山地民、ユーミエン(ヤオ)の社会における核家族化の傾向の要因と、その結果としての祭祀・儀礼知識の伝承の変容を聞き取りと観察によって調査し、分析した。調査はパヤオ県、ナーン県、チエンラーイ県内のユーミエン村落4か村と、チエンマイに在住するユーミエンを対象として行った。その結果として、次のことが明らかになった。
1.近年急速に進んだ核家族化は最近になって始まったものではなく、少なくとも過去40年以上の間の家族構造の変化の一部である。
2.以前は父系合同家族員の協同で行われていた活動が、換金作物耕作単位、自給作物耕作単位、食事単位の順に核家族化が進み、近年、最終的に居住単位の核家族化へと進行した。
3.この長期にわたる核家族化の要因は、以下のものが挙げられる。
(1)1970年代の阿片芥子栽培取り締まり強化による換金作物の多様化
(2)1989年の森林伐採禁止政策による焼畑耕作の終焉
(3)これらの結果としての職業多様化(農外就労・出稼ぎ)
(4)政府の山地民福祉政策および地方行政政策への対応
(5)学校教育とタイ文化の影響
4.居住も核家族化が進んだが、儀礼活動においては「分家」した数家族が祖先祭祀儀礼を協同で行う形態が増え、儀礼活動においては核家族化していない。
5.このような儀礼における家族未分化状態は、次のような祭祀・儀礼知識の状態に対する適応である。
(1)祭司の後継者不足と世代間の祭司・儀礼知識の伝承の弱体化
(2)儀礼知識分布の年長世代への偏りの増大
6.こうした祭司・儀礼知識伝承上の問題に対しては、文化復興運動が各地で現れ始めている。
7.焼畑耕作から定住化の過程を経て、常設の廟などの新しい儀礼形態も生じてきた。
8.これらの事態は焼畑移動耕作から定着耕作への移行と、それに伴うタイ社会への適応とによって起きているのである。

研究成果

• [雑誌論文] タイ北部山地民ユーミエンのピャオ(家) (2005)
  • 著者名/発表者名: 吉野 晃
  • 雑誌名: アジア遊学 74号(印刷中)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] The pyao (house) of the Iu Mien, Highlanders of Northern Thailand (2005)
  • 著者名/発表者名: YOSHINO, Akira
  • 雑誌名: Asia Yugaku 74(in printing)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [雑誌論文] タイ北部、ユーミエン・ヤオ族の核家族化現象-中間報告と予備的考察- (2003)
  • 著者名/発表者名: 吉野 晃
  • 雑誌名: 東京学芸大学紀要 第三部門 社会科学 第54集 ページ: 117-125
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [雑誌論文] The increase of nuclear family among the Iu Mien of Northern Thailand : an interim report (2003)
  • 著者名/発表者名: YOSHINO, Akira
  • 雑誌名: Bulletin of Tokyo Gakugei University, Section 3, Social Sciences 54 ページ: 117-125
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [図書] 講座 世界の先住民族:ファースト・ピープルズの現在2東南アジア(吉野晃「ユーミエン(ヤオ)」) (2005)
  • 著者名/発表者名: 林行夫, 合田濤(編)(吉野晃ほか15名の共著)
  • 総ページ数: 336(84-97)
  • 出版者: 明石書店
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [図書] 中国の民族表象-南部諸地域の人類学・歴史学的研究-(吉野晃「中国からの連続性とタイにおける示差-タイにおけるユーミエン(ヤオ)の自民族表象-」) (2005)
  • 著者名/発表者名: 塚田誠之, 長谷川清(編)(吉野晃ほか13名の共著)
  • 出版者: 風響社(印刷中)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [図書] The first peoples of the world 2 SoutheastAsia(Yoshino, Akira wrote pp.84-97) (2005)
  • 著者名/発表者名: HAYASHI, Yukio, GOUDA, Toh(eds.)
  • 総ページ数: 336
  • 出版者: Akashi Shoten
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [図書] The ethnic representation in China : anthropological and historical studies on the Southern Region (2005)
  • 著者名/発表者名: TSUKADA, Shigeyuki, HASEGAWA, Kiyoshi(eds.)
  • 出版者: Fukyosha(in printing)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [図書] 民族の移動と文化の動態-中国周縁地域の歴史と現在-(吉野晃「タイ北部、ミエン族の出稼ぎ-二つの村の比較から-」) (2003)
  • 著者名/発表者名: 塚田誠之(編)(吉野晃ほか15名の共著)
  • 総ページ数: 724(159-192)
  • 出版者: 風響社
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [図書] The migration of ethnic groups and the dynamics of cultures : the history and the present of the region around China(Yoshino, Akira wrote pp.159-192) (2003)
  • 著者名/発表者名: TSUKADA, Shigeyuki(ed.)
  • 総ページ数: 724
  • 出版者: Fukyosha
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より