本研究は、東アフリカ牧畜社会において土地をめぐって現在進行しつつある状況を、土地利用・土地所有の形態や制度論といった側面のみならず、さまざまな文脈において生起する人びとの具体的な実践から、その生活世界を統合的に把握することによって解析するものである。 年度前半は、チャムスとトゥルカナ(以上、ケニア)およびドドス(ウガンダ)におけるこれまでの現地調査で得られた一次資料の整理・分析をすすめるとともに、成果の一部を中間報告として日本アフリカ学会等において発表した。また、国内において、京都大学アフリカ地域研究資料センターや東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所等の研究機関から情報・資料を収集した。 年度後半には、約4カ月間(平成13年10月25日〜平成14年2月20日)の現地調査および関係資料の収集等をおこなった。ウガンダ共和国・カラモジャ地域においては、ドドスの土地・自然資源をめぐる認識と利用に関する基礎データを収集した。具体的には、(1)牧畜活動にともなう分散・移動を軸とした生活様式の実態、(2)土地・自然資源の利用の実態と実利実用的な知識の詳細、(3)「地名」への言及、「地名」に収斂された知識の内容、および「地名」にこめられた記憶の追跡、(4)ドドスランドの景観特徴とドドスの空間認識との関係等について、言語的資料(言説等)や人びとの具体的な行為・行動に関する観察データ等の一次資料を収集した。また、ケニアにおいてこれまで研究を継続してきたチャムスについても短期調査を実施し、比較資料の収集をおこなった。 成果の一部は、おもに「地名」を手がかりとして身体性を軸とした空間認識について考察した内容を「『地名』という知識-ドドスの環境認識論・序説」(佐藤俊編『遊牧民の世界』京都大学学術出版会、近刊)、「『地名』の繋ぐもの」(『アフリカレポート』No.33、2001年)等にまとめた。
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