本研究は、東アフリカ牧畜社会において土地をめぐって現在進行しつつある状況を、土地利用・土地所有の形態や制度論といった側面のみならず、さまざまな文脈において生起する人びとの具体的な実践から、その生活世界を統合的に把握することによって解析することを目指したものである。 前年度に引きつづき、年度前半はチャムスとトゥルカナ(以上、ケニア)およびドドス(ウガンダ)におけるこれまでの現地調査で得られた一次資料の整理、分析を進めるとともに、成果の一部を日本アフリカ学会等において発表した。年度後半には、ウガンダ共和国において約2カ月半(平成14年12月12日-平成15年3月1日)の現地調査および関係資料の収集等をおこなった。ドドスの調査においては、土地、資源資源にかかわる多彩な実践と集団間関係に関する資料を収集した。具体的には、(1)民族集団レベルにおけるテリトリーをめぐる対立・同盟・交渉にかかわる実践、(2)「敵」の撃退儀礼をはじめとする各種儀礼の内容と具体的な実践の詳細、(3)通婚による姻族関係や友人関係にもとづく民族集団間にまたがる個人的関係の実態、(4)旱魃、内戦、開発援助の導入など外部環境の変化にたいする実践等について、言語的資料、観察データ、認知地図等の一次資料を収集した。また、森林省や国土地理院(Uganda Land & Survey)において地形図や植生分布図などの資料を収集した。一方、国内においては京都大学アフリカ地域研究資料センター等の研究機関から情報、資料を収集した。 本年度のおもな成果として、「地名」を手がかりに身体性を軸とした空間認識について考察した「『地名』という知識-ドドスの環境認識論・序説」(2002)、土地、自然資源をめぐって共存/葛藤しあう隣接集団間の関係について「『敵』の実体化過程-ドドスにおけるレイディングと他者表象」(2002)等を提出した。
|