1.調査の実績 (1)五木村の堂の現状調査 ・川辺川ダム建設に伴う水没予定地域を中心に、下記地区の堂の実態調査を行った。 ・小浜、大平、野々脇、下谷、板木、下手、田口、久領、高野、土会平、九折瀬、八原、瀬目の各地区。 (2)堂関連文献資料調査 ・五木村教育委員会所蔵「文化十二年五木谷絵図下地」の写真撮影。 ・熊本県立図書館所蔵文献資料「五木村相良村水没地域振興計画」ほかの複写等。 2.調査研究結果の所見 (1)川辺川ダム建設の動きが本格化し、堂に対する住民の日常的な関与・管理機能が低下している。 (2)集落移転後の堂のあり方は、村が明確な方向性と対策を示さず、住民の意向に任されている。 (3)水没地域内の各集落住民の堂に対する取扱いは、現状では、次の6つの型に分類できる。 (1)旧住民が移転した土地に移して以前の形を引き継ごうとしているもの (2)堂のみが村内に移転して残されたもの (3)旧住民が移住先へ持って出たもの (4)移転した公会堂の中に取り込んだもの (5)寺に預けたもの (6)未決定のもの (4)堂の祭祀が村落の自治や統合に果たした役割は大きかった。現在でも、高野地区(集落単位で移転)や、旧野々脇地区(多くが村外移転、一部が村内に留まる)のように、移転住民間の親交を深め、旧集落住民間の絆を保つ場として重要な役割を果たしている。 (5)以上から、川辺川ダム建設は住民の村落自治意識に関し、変革と低下をもたらしたと言える。その意味で、住民自治の具体的発現の場として、今後は堂の重要性が再認識される必要がある。
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