エジプト・アラブ共和国西部砂漠に居住するベドウィンの間で、「ムラービティーン」と称される人々が占める周縁的な位置が、いかにしてベドウィン全体の自己定義の重要な一部をなしてきたかを多面的に論じることで、これまで行ってきた研究の二つの柱であるベドウィンの出自論と聖者論を接合させることを目指した。 平成13年度はこれまでの現地調査で蓄積したデータを、テクスト・ファイルと画像データへ転換する作業を進め、クロスリファレンスを作成するなど、効率的な利用が可能な状況を作り出すべく、2名の大学院生の補助を得て、その作業の大部分を終了した。一部、アラビア語の手稿などについては、来年度に継続して作業する。 必要な文献の収集と読み込みはこれを通年で行い、来年度にも継続する。ムラービティーンによる儀礼歌などについて、未訳分を順次訳出する作業は、現地の方言を解する者が日本国内にはいないため、アレクサンドリア大学文学部人類学科在籍のベドウィン出身の学生に協力を依頼したが、現時点ではあまり進展がみられず、来年度の課題となっている。 具体的な成果としては、10月に木更津で開催された国際シンポジウム"The Dynamics of Muslim Societies : Toward New Horizons in Islamic Area Studies"で、本研究の成果を英語で口頭発表した他は、関連する文献に関する書評論文や、簡単な小論に今年度はとどまった。来年度は、マインツ(ドイツ)で開催される第1回中東研究世界大会において口頭での発表が決定している他、予定通り、学術誌もしくは関連する論集に論考を発表する予定である。 なお、備品として購入を予定していたフィルムスキャナーについては、所属先の機器が使用できたため購入を見合わせた。
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