エジプトの西部砂漠に居住するベドウィンの間で、「ムラービティーン」と称される人々が占める周縁的な位置直を多面的に論じることで、従来の研究の二つの柱であるベドウィンの出自論と聖者論を接合させることを目指した。結果として、イスラームの信仰実践における聖者の境界性とベドウィンの出自組織におけるムラービティーンの境界性が「聖者の末裔」であることを名乗るムラービティーンの存在を範型として成立しているごとの全体をかなり明らかにすることができた。また、スーフィズムと聖者信仰の関係についても、スーフィズムの欠如した聖者信仰の形を紹介することで、この分野の研究に寄与することができた。 これまでので蓄積したデータの整理については、テクスト・ファイルと画像データヘ転換し、クロスリファレンスを作成するなど、効率的な利用が可能な状況を作り出すべく作業を進め、その大部分を終了した。ただし、ベドウィンの儀礼歌を訳出する作業は現地者との連絡が不調であり、これについては期待した成果を上げることができなかった。これら資料整理と文献の読み込みに基づき、具体的な成果としては、平成13年10月木更津にて開催の国際シンポジウム"The Dynamism of Muslim Societies : Toward New Horizons in Islamic Area Studies"および平成14年9月にマインツ(ドイツ)で開催された第1回中東研究世界大会(WOCMES)で、本研究の成果を英語で口頭発表し、それを含めた論集の刊行を準備している他関連する論考若干を発表した。『民族學研究』および『イスラム世界』への投稿の予定は、執筆の時間的制約からかなわなかったが、これに代えて東京大学出版会から平成15〜16年度に刊行される予定の『イスラーム地域研究叢書』において、本研究の成果を3本の論文として発表の予定である。
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