研究概要 |
本研究は日本海沿岸域に立地する4漁村(増毛-北海道、脇野沢-東北、鹿磯-北陸、恵曇-山陰)を調査対象として、漁民社会における民俗形成に女性、とりわけ漁民の妻がどのように係わり、役割を果してきたのかを実態的に調査し分析することを目的として計画されたものである。具体的には、当該地区における漁業の現況や変遷、それに依存する漁民家族をとりまく経済的・社会的基盤、漁民の信仰・行事・俗信などの実態を漁民家族の生活誌(史)を検討することで、女性とりわけ漁民の妻がその行動を通して、歴史的かつ社会的に地域の民俗形成過程といかに係わってきたのかを明らかにすることを目的として設定してきた。 本年度は3ヶ年計画の最終年度に当たり、調査対象漁村を、脇野沢(東北)、鹿磯(北陸)の2地域に限定し、問題の深化を期すべく調査研究を昨年にひき続き実施した。実施期間は脇野沢(8/23-9/2)、鹿磯ならびに金沢(8/9-19,2004年2/15-21)で現地での調査、金沢では鹿磯関係の史・資料を県立図書館、県立歴史民俗博物館などで収集した。これらの調査を通して、脇野沢では、漁業協同組合婦人部の活躍を刊行されている会誌から検討を加え、これに加わって参加してきた女性へのインタヴューを実施し、女性の漁業への関与や婦人部での学習・レジャーなどについて明らかにできた。鹿磯では主として年中行事や人生儀礼の実態と女性のこれへの関与について調査を実施し、あわせて、近世における寄鯨をめぐる慣行を文献史料を通して検討してきた。また10月に実施された山口大学での日本民族学会年会において、本研究をベースとして、シンポジウム「海-交流の舞台-」にコメンテーターとして参加した。 なお、最終年度に当るため、6月末を目途に、研究成果報告書を鹿磯、脇野沢二地区での調査成果を中心にまとめ、刊行する予定である。
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