本研究は平成13年度から15年度にわたる3ヶ年の研究費補助金を受け、日本海に面してその沿岸域に立地する4漁村(増毛-北海道、脇野沢-東北、鹿磯-北陸、恵曇-山陰)を当初調査対象として漁民社会における民俗形成に女性、とりわけ漁民の妻たちがどのように係わり、役割を果してきたのかを実態的に調査し分析することを目的として計画されたものである。具体的には当該地区における漁業の現況や変遷、それに依存する漁民家族をとりまく経済的・社会的基盤、漁民の信仰・年中行事・人生儀礼や俗信などの実態を漁民家族の生活誌(史)を検討することで、女性、とりわけ漁民の妻がその行動を通して歴史的かつ社会的に地域の民俗形成過程といかに係わってきたのかを明らかにすることを目的として設定してきた。 この研究目的を達成すべく、第1年度は上記4地区に係わるパイロット・サーヴェーを実施し、それぞれの地区の概況把握につとめた。第2年度は第1年度にひきつづき4地区での漁民家族に係わる調査を続行し、資料密度の高い脇野沢-東北と鹿磯-北陸の2地区に対象をしぼり込むことで、より具体的な調査内容に基づき、研究の深化をめざした。この間フィールドワークのみならず、図書館や博物館など現地の機関などで資料の収集にあたった。第3年度は最終年度として研究報告書作成を目途として、両地区での調査を続行し、報告書の執筆・刊行を行なった。結果、漁村婦人の地域の民俗形成への関与は種々の面において確認された。鹿磯地区では儀礼や行事と係わる女性、もともと寄り物拾ひから発生した海苔採集など婦人労働の実態を明らかにすることができた。また脇野沢では一漁村婦人のライフヒストリーを通し生活の中での女性の役割や漁業労働との関係、漁協婦人部での活動実態を明らかにした。
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