山車類が巡行する大規模の現行都市祭礼は全国(南西諸島は未伝承)で1500にも及ぶ報告がなれているものの、その詳細な調査報告は自治体史の民俗編ではほとんど取り上げられておらず、各祭礼ごとの調査報告書も自治体や保存会によりわずかに刊行されているにとどまっている。本研究においては、全国に展開している祭礼文化圏のうちでも、代表的、かつ調査・報告が不充分な祭礼を対象に調査し、伝承・文献・画像等の諸資料を収集することを目的としている。 本年度は山車類のなかでも、移動式舞台となる芸屋台の代表として、石川県小松市の御旅祭りを調査した。2001年5月に行なわれた同祭礼を対象とし、曳山の組み立て、移動方法、ルート、保存方法、設計図、子ども歌舞伎など全般について参与観察を行なった。 同年7月には、人形山に分類される千葉県佐原の八坂神社祭礼の調査を実施した。これは継続調査の一貫であり、山車の運行、人形や造り物の作製、佐原囃子に焦点を据えて、調査を実施した。同年8月には、宮崎県延岡市の今山八幡宮祭礼の絵巻調査を実施した。現行の祭礼では、山車、造り物の類は出ないが、近世における祭礼風流はこの地域の典型的な祭礼であったことが確認できた。同月には鹿児島市諏訪神杜に関する調査を実施した。すでに、東京国立博物館所蔵の諏訪神杜の祭礼絵巻の調査を行なっており、現地の地域史に関する情報収集、周辺の太鼓踊りに関する民俗芸能の情報収集を実施した。今後、東京大学史料編纂所における島津家文書の調査を実施することで、近世都市鹿児島の都市祭礼の実態に迫ることを目指す。
|