本年度は囃子系の芸屋台の事例として岐阜県垂井町の垂井祭りと揖斐川町の三輪神社祭礼における子供歌舞伎の調査を実施した。祭りを実見したのに加え、後者の事例においては江戸中期・後期2種の祭礼絵巻の調査を行なった。シヤギリ坊主なる練物も描かれ、練物祭礼より芸屋台が成立していった過程を推定した。人形山の事例として、青森県八戸市の八戸三社大祭と宮城県仙台市の仙台東照宮祭礼の文献・画像・伝承の調査を実施した。特に後者の画像資料としては、宮城県立図書館・東北大学狩野文庫・仙台市立博物館・東京国立博物館・国立歴史民族博物館の所蔵資料を調査する事ができ、各年の町方風流練物をほぼおさえることが可能となった。その成果としては、能を題材としたものが多いことを指摘することができ、町人への謡文化の浸透が広範であることが解明できた。万度(燈)と一本柱の事例として、三年に一度の千葉県千倉町白間津のオオマチの調査を行なった。近代になって登場したと思われる松葉製の緑門(アーチ)が村の入り口に立てられ祭礼風流としても機能していたことが判明した。中世末の大山の事例として熱田神宮(現名古屋市)摂社南新宮の祭礼資料を名古屋市立鶴舞中央図書館並びに熱田神宮文庫に見出すことができた。特に前者の原本は16世紀とされ、すでに異国人仮装が描かれているのが興味深い。東照宮祭礼の風流として、御三家の内、水戸東照宮祭礼(水戸市)と和歌山東照宮祭礼(和歌祭)の画像・文献資料を調査した、朝鮮通信使が祭礼風流に採り入れられた事例として、岐阜県大垣市の旧城下町祭礼の画像・文献資料を調査した。田遊びにおける祭礼風流の事例として、静岡県藤枝市滝沢の八坂神社祭礼、田楽の事例として同県水窪町西浦田楽の調査を実施した。
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