平成13年度の研究実施計画は、日清戦争後の要塞動員計画令制定及び要塞防御計画策定における防衛体制構築構想を解明することが目的であったが、下記のように研究実績を獲得できた。 1.写真撮影費によって、『陸軍省大日記』中「軍事機密受領編冊」「軍事機密大日記」における要塞動員計画関係文書を要点撮影・複写し、要塞動員計画構想や要塞防御計画策定の特質を分析した。この分析により、日本の要塞は海岸要塞であったが、日露戦争時までは陸正面に対する防御戦闘も重点的に組み入れた要塞防御計画が立てられたことを解明した。 2.特に、予備調査等で資料収集した『陸軍省大日記』中「密大日記」「満密大日記」等における要塞動員計画実施文書を分析し、日露戦争下の函館要塞動員において、歴史的にはヨーロッパ要塞の防御戦闘における重要な戦備工事として採用されてきた「射界ノ清掃」(要塞からの陸正面に対する射撃目標の障害物を除去する作業)という手続きの実施に対して、函館要塞司令部の可否をめぐる議論の意義を解明した。
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