1 今年度は、長崎県立長崎図書館郷土史料室、長崎大学付属図書館経済学部分館武藤文庫、大村市立史料館、平戸松浦史料博物館、島原市立図書館松平文庫、対馬歴史民俗資料館、大阪府立中之島図書館等における関係史料の調査・収集を実施したが、幕府初期の関係文書・記録類は極めて僅少であることが再確認された。 2 上記1でし収集した史料の内、大阪府立中之島図書館所蔵の「長崎商賈人割符由緒之事」を翻刻した(『歴史情報』4号)。 3 平成6〜8年度科学研究費助成金(基盤研究(C)「コンピュータによる総合情報処理的長崎貿易史の研究」で開発した「マルチ年表システム」をさらに改良し、幕初の対外関係事項および対外関係文書を入力し、データベースの作成を進めている。 4 いわゆる「鎖国」に関わる明治以降の文献(目下約200点余)を収集し、「鎖国」に関する研究史のまとめを進めている。この作業の中で、気に掛かっていることは、いわゆる「鎖国令」について、最も基礎的な課題であるのに、法令としての検討が不十分ではないか、ということである。特に、いわゆる寛永12年令などは、詳細な検討が必要とされる法令のように思われる。一般的に、割合無批判に「鎖国令」などと称して便利に使用しているが、当令状自体は見い出されておらず、全て転写された形のものを使用している現状であるが、転写された当令の比較検討さえ行われていない現状である。検討を実行したい。
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