(1)朱印船貿易に関する史料の分析 朱印船貿易に関する基本史料である「異国御朱印帳」と「異国渡海御朱印帳」の分析を試みた。すなわち、この両史料は異国渡海朱印状の交付台帳と称すべき書物であるが、これに基づいた異国朱印状の交付状況について考察した先学の研究が見られるが、朱印状の交付数などに相違が見られるので、真偽を検討した。結果は「家康支配期の異国渡海朱印状交付に関する統計的検討」(竹内誠編『徳川幕府と巨大都市江戸』東京堂出版)を発表した。 (2)「鎖国」に関する史料の基礎的検討 「鎖国」に関する最も基礎となる史料は、いわゆる寛永の「鎖国令」であるが、この正文はいまだ明らかになっておらず、転写されて伝来したものが利用されてきた。しかし、転写伝来のものでは、条文・文言などに相違が見られる状況である。そこで、基礎的な作業として、平成13年度に、いわゆる「寛永十年鎖国令」についての諸本に見られる同令の校合・条文の意味解釈等を試み、「「寛永十年二月二十八日鎖国形成令」の検討」を発表し(「歴史情報」No5)、同様に、翌14年度には「「寛永十一年五月二十八日鎖国形成令」の検討」を発表した。(「歴史情報」No6)。今年度はこれに次いで「「寛永十二年鎖国形成令」の検討」(「歴史情報」No7)を発表した。 (3)糸割符関係史料の検討 慶長9年(1604)に始まる糸割符制度に関する基礎的な史料、由緒書類二十数点、長崎旧記類六十数点について検討した。結果は、近時発表する予定である。 (4)幕府初期の対外関係に関する史料調査・収集 「永青文庫」(熊本大学附属図書館)の調査を実施し、鎖国に関する史料を収集した。また、相国寺所蔵(承天閣美術館)の異国渡海朱印状の正文を調査し、写真撮影した。 その他、長崎県立長崎図書館。堺市立中央図書館等で関係史料の調査・収集を実施した。
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