本研究は、近世の朝廷儀礼をめぐって朝廷と幕府および藩とが、いかなる関係を取り結んでいたのかを検討することにより、朝・幕・藩関係の研究を深化させ、近世国家史と政治史研究を豊かにすることを目的としている。なかでも、もっとも重要な天皇の即位と葬儀のさいの儀礼を中心にすえて取りあげた。研究がほとんどなされていない分野なので、本年度も関係史料の所在の確認と、必要な史料の蒐集が第一の課題となった。そのために本年に行った主な史料の調査と蒐集の作業は、以下の通りである。 (1)前年に引き続き、『徳川実紀』『続徳川実紀』から、天皇の即位と葬儀、および朝幕間の儀礼にかかわる幕府の措置を洗い出した。 (2)東京大学史料編纂所所蔵の備後福山阿部家文書のうち京都所司代時代の日記を調査、撮影した。京都所司代の公務日記は希有であるので精査した。 (3)朝廷の儀礼に大名・藩がいかに関係したのかを具体的に検討するため、藩政史料の調査をおこなった。鶴岡市立図書館郷土資料室で庄内藩酒井家史料、長崎県島原図書館松平文庫所蔵島原藩松平家史料を調査した。とくに、島原図書館では比較的近世前期の関係史料を蒐集することができた。 所在の確認と関係史料の蒐集が中心であったが、(1)の作業で基本的な儀礼の枠組みとその変化を概観することができ、(2)、(3)の作業により蒐集した史料の解読をおこなった。
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