本年度は以下の研究を行った 1越後国地主文書調査・分析 新潟大学図書館所蔵の越後国の地主文書について調査を行った昨年度の成果に基づき、補助的調査を行い、地主作徳米売却の態様について分析を行った。その結果地主作徳米の売却について、地元米商人と港町の米商人といった複数の米商人が有機的に連携しつつ介在する形態が抽出できた。これは複層的な地域社会構造の把握に資する知見といえる。 2北前船関係文書調査・分析 咋年度来整理・調査を続けてきた能生町伊藤家文書について、関連史料の写真撮影を継続しつつ地主作徳米の輸送主体としての経営実態分析にあたった。その結果「三田米」が越後における特殊な商品であることを確認し、関連文献とあわせて、この「三田米」の特質を整理した。 3集散地・消費地関係文書本調査 上記1・2との関連においてこれら地主作徳米の最終的売却先である畿内における本調査の可能性を探ったが、適切な文書群が見いだせず、従来の知見を参照するに止まった。 以上が本研究の概要である。越後における膨大な文書群の整理・翻刻等に追われ、なお総合的な分析の必要性を課題として残す結果となったが、大地主が卓越した地域における地域社会構造を解くためのいくつかの視角を得ることができ、今後の研究に生かせる知見が得られたと考える。
|