研究概要 |
広く全国的視野に立って諸階層の対外的危機にかかわる史料の収集を目指し,下記機関の史料調査を実施した。その上で,写真機による撮影により史料を収集し,現像・焼付をした上で,解読,分析を行った。 1.東京大学史料編纂所「大日本維新史料稿本」から,ペリー来航に対する諸藩の動員体制と民衆の反応にかかわる史料を調査・収集した。 2.国立国会図書館 江戸湾周辺の主として武蔵国多摩地域を中心とした各自治体史を調査・収集し,民衆の対外的危機意識と攘夷意識の形成にかかわる史料を抽出した。 3.山口県文書館 吉田樟堂文庫の大津家文書の中から,対外的危機にかかわる史料を調査し,嘉永・安政期に江戸から村田清風宛にもたらされた書簡を収集した。 4.山口県立図書館 山口県地域の北浦を中心とした『豊北町史』・『豊浦町史』などの自治体史および地方出版物などから対外的危機にかかわる関係史料を調査・収集した。 5.安浦町教育委員会 安浦町の進藤家文書のうち対外的危機にかかわる文書を収録した「幕末御用留」を調査・収集した。 以上の調査により,1840-42年のアヘン戦争における清国の敗北は,日本の支配層に深刻な危機意識を形成させ,対外防備の対応を開始させたことが判明した。しかし民衆レベルでは未だ危機意識の形成は見られなかった。1853年のペリー来航は,支配層から民衆まで含めて広く全国的に諸階層の対外的危機意識が発生し,幕府が諸藩を動員して対外防備の取組が行われた。さらに幕府の対外問題への対応の不徹底が,植民地化の危機意識を深刻化させ,民衆の危機意識を背景に攘夷運動を高揚させていったことが明らかになった。
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