(1)本研究と関連する研究発表を「第25回地中海学会大会」(2001年7月1日)において、「海域とネットワークから見た琉球史(14-19世紀)」として発表した(成果報告書に掲載予定)。その概要は、旧来の琉球史を海域・海運・漂流・ネットワークという視点から整理・再検討し、あわせて関係史料の発掘状況を紹介し、さらにデータ化の必要性を述べたものである。 (2)本研究初年度で漂流・海運史料のテキストデータの入力は次のものを行った。第一に、既刊史料において、漂着船への包括的対応策を示す「進貢船・接貢船・唐人通船・朝鮮人乗船・日本他領人乗船、各漂着并破損之時、八重山島在番役々勤職帳」を原本と校訂し、正確なテキストデータを作成した。第二に、『琉球王国評定所文書』から海運・漂着関係を抽出し、テキストデータベースを作成した。第三に、未刊行の「上江洲家文書」から海運関係史料を翻刻・テキストデータを作成した。久米島での造船状況や久高船・慶良間船に関係する史料を発掘することができた。 (3)久米島での臨地調査は、媽祖(天后)廟の現況、さらに現在、同島に残る伝統的木造船の状況を調査した。小型木造船であるサバニが現在では圧倒的にグラスファイバー製に替わっている。ただし、なお数艘木造船も存在する。現存する木造船から前近代における造船技術の状況を窺う素材とした。
|