平成13年度は研究に必要な基礎データの収集と整理、そしてできるだけ漢籍原本の調査を行うという当初の予定に従い、まず関連研究文献を中心としてデータの収集に努めた。その成果の一端として、文化交流に関する書評を2本、本年度の対外関係・文化交流・法制文献などについての研究状況を整理したもの(『史学雑誌』回顧と展望)をまとめることができた。 次に漢籍原本の調査ということでは、高野山に所蔵される国宝『文館詞林』の調査を計画したが、先方の都合により実行できなかった。なお、予備調査としては、東京大学史料編纂所において、コロタイプによる下調べは行った。また、日本への将来漢籍ではないが、北京大学図書館において『日本後紀』などの日本文献の抄本と『唐会要』の抄本の原本調査を行った。その成果は、「北京大学図書館李氏旧蔵『唐会要』の倭国・日本国条について」として論文にまとめ、勤務先の紀要に発表した。 3つ目には、律令法典の受容に関連して、日本と唐代の賤民の比較研究を行った。その成果は、「唐日戸令当色為婚条について」「日唐賤民の身分標識について」という2本の論文にまとめ、平成14年度刊行予定の研究書に収められることになっている。 本年度の研究の概要は以上だが、予定した漢籍渡来に関する史料の収集・整理があまりできなかったことが問題として残る。平成14年度は、この点を重点的に進めたいと考える。また、『文館詞林』の原本調査は当面不可能なので、コロタイプによる調査をさらに徹底したいと考えている。
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