平成14年度の研究としては、第1に漢籍の日本将来に関する史料の収集・整理、第2に日本将来の唐代書籍の書誌学的研究、第3に東アジア文化圏に関わる研究史の整理と問題点の確認を計画した。 第1の研究については、まだ基礎的データの収集の途中にあるが、その分析の視点、まとめ方について些か検討を進めているところである。具体的には、平安時代前期に成立した『日本国見在書目録』所収の漢籍のうち、唐代の書籍だけを抜き出し、(1)どの時期の書籍までは日本に入っているか、(2)どの種類の書籍は将来され、どの種類の書籍は将来されなかったか、(3)『日本国見在書目録』に所収されなかった日本将来の唐代書籍とのデータ比較、という形で分析・整理したいと考えている。 第2の研究については、『文館詞林』の史料を収集し、残巻の巻毎の性格の違いを主に則天文字に注目しながら検討を進めている。また、『晋書』については、『日本書紀』になぜ引用されていないのかということから、その日本伝来の時期を検討しているところである。 第3の研究については、「遣唐使と訳語」というテーマで東アジアにおける音声言語による国際交流という視点から、また「渤海が伝えた「大唐〓青節度康志〓交通事」について」というテーマで国家間の交通のあり方という視点から、さらに「日唐賤民の身分標識について」というテーマで律令制の継受という視点から、それぞれ検討を加えた。なお、この三つのテーマについては既に論文化し、単行本に収められ2003年中に刊行される予定である。
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