本年度は、昨年度に引き続き三后(皇后・中宮・皇太后・太皇太后)に関わる平安時代の史料の収集に努め、それらの整理・分類を行った上で、コンピュータへの入力に時間と経費をかけた。その結果もあり、平安時代を通じた三后の動態が把握できるところにまできたと思える。 また、本年度は、三后が王権の多極構造の中でどのような位置を占めるかを時代的変化に留意して探るための分析に着手した。作業の過程で、より鮮明になってきたのは、律令制的三后が、独自の位置を占めているものの、現実の政治過程の中で矛盾を生みだし、「国母」という令制外の女性の政治権力を生み出さざるを得なくなってくる事実である。これらの分析の詳細は、次年度に委ねざるを得ないが、興味深い事実であり、平安時代王権の一つの特色として指摘できると思える。 なお、本年度に、本研究に着手する際の基礎的事実の確認を踏まえて行った2000年の日仏女性研究会のフランス(パリ)での報告(「古代の政治権力と女性」)が、『日仏共同研究報告書』として公刊されたことを付記しておきたい。
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