研究課題
基盤研究(C)
昭和戦前期の日中関係について研究は多くの蓄積があるが、そのほとんどは政軍関係のなかで、日本の対中国政策の実態を追究するものである。日本の対中国政策の形成に不可欠な情報は、多くの場合、現地の外交官によって提供されたものである。したがって、現地の外交官の世界認識や中国観及び政策論などは日本の中国政策を考える上で極めて重要な要素といえる。しかし、この分野についての研究はほとんどなく、日中関係史研究の盲点ともいえる。本研究はこの欠落の部分を補うものである。研究の過程において、日本の外交文書、関係者の回想録を数多く収集したほか、中国大陸の図書館、資料館の史料及び台湾に所蔵されている史料なども集めた上で、分析を行ない、数篇の論文を執筆した。すでに活字化されたものは、満州事変前後の日中関係、および日中戦争中の汪兆銘政権をめぐる外交官らの対応に焦点を絞ったものである。これらの論文は、重光葵、須磨弥吉郎、石射猪太郎などの「支那通」外交官の意見と行動が、日本の外交政策の形成に果たした役割を分析した。これらの研究をベースに、研究の総括として、著書をまとめる段階に入っている。著書は芳沢兼吉、重光葵、有吉明、川越茂などの駐華公使、大使のもとで活躍した外交官たちを主な研究対象とする。彼らが残した報告書や意見書、中国の政治家や外交官との会談録などを基本的な史料として、外交官たちがどのような日中関係構想を持っていたのか、日本国内にどのような情報を提供し、政策決定にどのような影響を与えたのかを明らかにする。戦前の緊迫した日中関係のなかで、外交官らは、中国との関係改善を願いつつ、日本の「国益」を如何に実現していったのか、その行動を追跡することによって、近代日中関係の重要な側面を浮き彫りにしたいと思う。昭和戦前期の日中関係をもう一度捉えなおすことがこの研究の最終目的である。著書は2006年中に完成する予定である。
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『国境を越える歴史認識』(劉傑・三谷博・楊大慶編)
ページ: 53-83
ページ: 171-201
アジア太平洋戦争第7巻『支配と暴力』(岩波講座)
Contending Issues in Sino-Japanese Relations : Toward a History Beyond Borders(RYU Ketsu, Mitani Hiroshi)
『日本立憲政治の形成』(鳥海靖・三谷博ほか編)
ページ: 288-316
The Completion of Constitutional Government of Japan.(Toriumi Yasushi)