4年次計画の第3年度次あたり、前年に引き続いて全体を総括するための作業を行った。当該期に発給された文書の史料学的研究については、古代・中世文書をもとに体系化されている「古文書学」との関わりで様式・形態等を検討していく作業と、それを生み出した社会的背景をさぐる作業とを並行してすすめている。すべてが直状形式で奉書形式をもたない織田・豊臣政権の発給文書と、奉書形式をも合わせもつ徳川政権の発給文書との違いは歴然としており、それが何に由来するかを明らかにすることは、政治権力の本質解明につながる問題であるように思われる。別掲の「国掟」や、既に明らかにした「陣立書」のような、統一政権の成立過程で生み出された文書についての研究が今後とも必要であろう。 豊臣秀吉発給文書を集大成する作業については、引き続いて文書を収録する作業をすすめた。天正10(1582)年までの文書を対象とする「準備稿」の編集は予想外に手間取り、年度内にパソコンに入力する作業に着手することが出来なかったので、次年度の早々に完了させるつもりでいる。現時点では、東大史料編纂所・大阪城天守閣など主要な史料所蔵機関の調査は一応完了しているが、なお年々「新出史料」として紹介される文書は少なからず存在する。一見して全く無関係と思われるような表題の史料群の中にも、関係する文書が含まれている場合もある。それゆえ、作業は手探りの状態で進めなければならず、終わりのない営みではあるが、一点でも多くの文書を採録したいと考えている。
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