本年度は、この3年間に米国立公文書館で収集した史料(沖縄戦における日本軍兵捕虜、沖縄一般市民、朝鮮人人夫に対して米軍が実施作成した尋問書)の分析を引き続き行い、激しい戦闘状況の中で日本軍兵捕虜、沖縄一般市民、朝鮮人人夫の各グループ成員間でどのように相互認識が行われ、どのような残虐行為がどのような原因で発生したのかについての考察を、昨年度同様、引続き行った。また同時に国会図書館、知覧特攻博物館、豪州戦争博物館、豪州国立公文書館などでこれまでに収集した学徒出身特攻隊員の心理分析のための資料、神風特攻の攻撃で大きな打撃を受け、多くの被害者を出した、豪州海軍艦船の乗組員の心理状況に関する資料の整理を行った。現在、学徒出身特攻隊員に自殺攻撃を決意させた心理的諸要因、自己の自殺行為に対する正当化、敵に対する意識の形態、それとは逆に自殺攻撃を受けた連合軍側将兵の敵に対する観念、戦争観などに関する分析を継続中である。 さらにまた、本年度半ばには、米国立公文書館でのさらなる資料収集、米軍が撮影した関連写真の選択・収集を行うと同時に、英国公文書館において、沖縄戦に参加し、神風特攻の攻撃を受けた英海軍戦艦の乗組員が受けた肉体的・心理的傷害に関する報告書類の探索にも従事した。来年度は、引続き、これまで収集した大量の関連資料の整理・分析作業を行い、その研究成果の一部を海外で開かれる学会で発表する予定である。
|