本研究の要点は、第一に実態調査、第二に実態の比較分析である。 第一の実態調査については、昨年度は台湾において実施したが、今年度はアメリカにおいて実施した。 2002年7月28日から8月10日までの14日間、ワシントン特別区とニューヨーク市に宿泊し、それらの地区を調査拠点とし、以下の国立墓地や歴史記念碑、博物館などを調査した。 ○アナポリス海軍兵学校、○5箇所の国立墓地(National cemetery)アーリントン、ロングアイランド、ゲティスバーグ、ワシントン、リンカーン、○ワシントン特別区内の歴史記念碑----ベトナム戦争記念碑、朝鮮戦争記念碑、ワシントンタワー、など。 ○博物館---スミソニアン歴史博物館、調査の主眼点は、物理的な実態(広さ、位置、建造物は高さ、面積など)、人々の意識、発行物などにおいた。また、調査対象としては、国立墓地の実態調査が主で、歴史記念碑などを従とした。 国立墓地の調査では、アーリントンが靖国神社などと比較してよく取り上げられるように、アメリカの代表的な戦没者追悼施設であるが、無名戦死の墓とそこにおける儀式、係官の説明などを聞き、特別な追悼意識、国家への昇華への特別な仕組みを発見した。軍人の葬式にも参列、観察した。国立墓地は、アメリカ全土で113箇所あり、広さではニューヨーク市のロングアイランド国立墓地が最大であるため、調査を行った。追悼の仕掛けや人々の意識はまったく異なり、一般墓地と変わらないような雰囲気の中にあった。リンカーン国立墓地は、軍人以外が埋葬されている墓地であった。ゲティスバーグ国立墓地は、南北戦争の北軍墓地であり、戦場に記念碑を配置して、全体として追悼の意思が表現されるように作られた墓地となっている。 記念碑では、ベトナム戦争記念碑が、多くの参拝者を集め、荘厳な雰囲気の中にあったことを確認した。 これらの戦争関連施設についての分析は、論文の形で行いたいが、現在のところ国民国家を維持するためのナショナリズム機構という印象を強くしている。「星条旗」にアメリカという国民国家の意思が表されているが、それを維持しているのはこれらの戦争関連施設である。
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